SSブログ

『全て緑になる日まで』大島弓子 [マンガ]

目には青葉 山ほととぎす 初鰹!

鰹のたたきは、まだ食していませんが、周りの景色は もうすっかり初夏のそれです。

目にも鮮やかな緑の山並みを見ていると、ふと
 あぁ・・・
 ジュラ姫は砂漠の国で元気で いらっしゃるのだろうか?
と、あの漫画のことが思い出されます。

大島弓子の『全て緑になる日まで』です。

冒頭・・・公衆電話ボックスの中で立ち尽くしている女の子の絵。

 外灯は暗く
 スズメは
 やせておりました


舞台はランドレス国。小さな観光立国です。
石油産出国のアラビア国が、石油の値段を引き上げたことで、大きな打撃を受けています。

主人公はレージデージという女子学生。
彼女には、美術大の同級生のマリオンという恋人がいます。
そのマリオンにプロポーズされたのですが、レージデージは返事をしていません。
実は、彼女の父が経営する石油会社が窮地に追い込まれており、そこに救済の手を差し伸べてきたライバル会社の条件は・・・息子とレージデージが結婚することでした。

大好きな父の会社を救うため、レージデージは、マリオンのプロポーズを断り、政略結婚の道を選ぼうと・・・(;_;)

ところが、そんな二人の前に謎の美少年が現れます。
名前は トリステス・・・本名ではありません。
マリオンは「いとこだよ」と紹介します。

しかし、実は トリステスは・・・
彼ではなく彼女・・・
その国の十六歳の王女、ジュラ姫だったのです。

アラビア国が石油を輸出する条件として、ジュラ姫との(政略)結婚を申し出ていました。
国を救うため、国民を救うため、ジュラ姫はアラビア国に嫁ぐ決心をしましたが、その前に少しだけ、自由な生活をしてみたいと家出をしていたのです。


結局、ジュラ姫はアラビア国に嫁ぎます。
一方、レージデージとライバル会社の息子の政略結婚は なくなり、レージデージとマリオンは婚約します。

ジュラ姫は、それでいいの!?

 いま 5 月
 すべては緑につつまれて
 かぐわしい自由を語って おりますけれど
 ねえ?
 アラビア王国は
 ほんとに砂漠ばかり なのでしょうか

 オリーブしげる丘は ないのでしょうか
 ローレルの小道は ないのでしょうか
 ミモザは?

 ねえ トリステス
 あなたの泣く場所は?
 砂のかげ?
 月のかげ?
 シルクロードの道のはた?



この漫画を初めて読んだ時は、決してハッピーエンドではない、この終わり方に無性に哀しくなりました。
今、読み直してみても、せつないです。

ひと時だけ、普通の生活をして・・・でも、その想い出は胸に秘めて公人として生きていかなければならない王女。
映画 『ローマの休日』がオーバーラップします。

自由が保障されている・・・当たり前のことだと思っていますが、いろいろなしがらみで、自分の好きな生き方を出来ない(出来なかった)人は、たくさんいる(いた)のですよね。


文庫版は、こちら。
あれっ? どうして「すべて」ではなく「全て」なのだろう?
【追記 訂正】
miyuco さんのコメントを見て、朝日ソノラマ版の大島弓子選集を確認したら、表紙絵に『全て緑になる日まで』と漢字で書かれていました。
なので、記事のタイトルを含め、本文中の作品名を訂正します。
miyuco さん、ありがとうございます!

文庫本の表紙絵は当時の絵ではなく、『全て緑になる日まで』のイメージとも、少し かけ離れています。(^^;



全て緑になる日まで.jpg

全て緑になる日まで (白泉社文庫)

  •  大島弓子
  •  白泉社
  •  1996/12
  •  文庫


で、こちらの選集にも収録されています。こちらのほうが、文庫本より大きいサイズなので読みやすいか、と。



大島弓子が選んだ大島弓子選集1.jpg

大島弓子が選んだ大島弓子選集 1 ミモザ館でつかまえて (MFコミックス)

  •  大島弓子
  •  メディアファクトリー
  •  2008/09/18
  •  18×13cm 444p

nice!(13)  コメント(24)  トラックバック(0) 
共通テーマ:コミック

nice! 13

コメント 24

あんみつ

jジュラ姫はマリオンが好きだったの?
by あんみつ (2010-05-23 11:27) 

barbermama

この漫画は読んでなくて、レジーデージーという名前を見て
最初に思い浮かんだのが刺繍の「レジーデージー・ステッチ」!中学時代の家庭科の授業を思い出しました(笑)。

今日お客さんとも話したのですが、好きな仕事に就いて
楽しい毎日を送っている人ってどれだけいるんだろうって。。

by barbermama (2010-05-23 14:47) 

Nicole-ay

最初に読んだのは、サンコミックスの新書判「F式蘭丸」の中に入っていたものでした。同じ作品を朝日ソノラマの選集でも持っていますが、このころの彼女の作品は今読んでも「正統派少女マンガ」って感じで好きです。白泉社文庫の表紙は「いちごものがたり」みたいでイメージ違うね?やっぱ、レージデージが公衆電話Boxに居るところでなくっちゃね^^;
by Nicole-ay (2010-05-23 23:28) 

びっけ

musemisty さん、nice!ありがとうございます!
by びっけ (2010-05-24 01:12) 

びっけ

manamana さん、nice!ありがとうございます!
by びっけ (2010-05-24 01:12) 

びっけ

capote さん、nice!ありがとうございます!
by びっけ (2010-05-24 01:13) 

びっけ

pochi さん、nice!ありがとうございます!
by びっけ (2010-05-24 01:13) 

びっけ

あんみつさん、nice!&コメントありがとうございます。
ジュラ姫が、たまたま車で出かけた時に大学寮のそばを通りかかり、絵を描いているマリオンを見かけ・・・。
最初は軽い好意くらいだったと思います。
でも、事情を話して、かくまってもらってからは、次第にマリオンのことが好きになってしまって・・・。
好きになってはいけないとわかっていたのに、ごめんよ・・・とレージデージに泣いて謝るシーンには、もらい泣きしそうでした。
by びっけ (2010-05-24 01:22) 

びっけ

barbermama さん、nice!&コメントありがとうございます。
>最初に思い浮かんだのが刺繍の「レジーデージー・ステッチ」!
barbermama さん、まさにビンゴ!です!!
彼女の名前は、レージデージ・クロステッチ!
刺繍のステッチ名から取ったのは間違いありません!(笑)

最初から、好きな仕事ができる・・・なかなか、できませんよね。
とりあえず、自分の仕事を好きになっていく・・・ならば、できそうかなぁと思います。
(^^;
by びっけ (2010-05-24 01:27) 

びっけ

haru さん、nice!ありがとうございます!
by びっけ (2010-05-24 01:29) 

びっけ

Nicole-ay さん、コメントありがとうございます。
おぉっ! まさに同じような経緯で私もこの作品と接してきました!
私も朝日ソノラマの選集は、今も愛蔵版として大事にしております!

少女の揺れる気持ち、不安定な気持ち、でも凛とした気持ちを描かせたらピカイチでしたよね。
白泉社文庫の表紙は、絵としては好きだけれど、このイメージを根拠にして本を選んだ人は(えっ?)と思いそうですね。
(^^;
by びっけ (2010-05-24 01:36) 

miyuco

トリステスが可愛かったですよね。
「晴れた日の敷石にねてみたいと思ってたんだ」
と寝ころがってみたり^^
「女のコになりたいよ」
と言う泣き顔を見たレージデージが
身を引こうと決める気持ちもわかります。

朝日ソノラマの選集第六巻に収録されている作品は
大島作品の大好きランキング上位のものばかりです。
(全てという漢字のタイトルであってるみたいですよ
ひらがなのほうが大島さんらしいのに)

by miyuco (2010-05-25 18:42) 

びっけ

ぼんぼちぼちぼちさん、nice!ありがとうございます!
by びっけ (2010-05-26 00:40) 

びっけ

ALBERT さん、nice!ありがとうございます!
by びっけ (2010-05-26 00:44) 

びっけ

ムクさん、nice!ありがとうございます!
by びっけ (2010-05-26 00:45) 

びっけ

miyuco さん、nice!&コメントありがとうございます。
そうそう! 女の子になりたいというくだりには、トリステスの切実な想いが込められていたんですよね。
読み返して、それがはっきりわかり、グッとせつなくなりました。

あっ! 本当だわ! miyuco さんのおっしゃるとおりでした!
朝日ソノラマでは、ちゃんと扉絵のページにも『全て緑になる日まで』と書かれてますね!!
今回、不精をして、メディアファクトリー版の選集を見たのですが、そちらだと、ひらがなになっていて、扉絵はタイトル文字が消されているのですよ!
どうしてなんでしょうね?
さらに、よくよく見てみたら、朝日ソノラマ版の扉絵では日付も「76.7.14 画」と書かれているのに、メディアファクトリー版では消されてました。
by びっけ (2010-05-26 01:03) 

春分

懐かしい。
名前は知ってるけど読んでたっけかと思ったけど、内容はすぐ目に浮かびました。
私にとって主なる作品ではないので、逆に急に思いだしてすごく懐かしい。
by 春分 (2010-05-26 21:56) 

びっけ

春分さん、nice!&コメントありがとうございます。
すぐに思い出せるというところが、春分さんの脳内データベースのすごいところ!

ところで、
春分さんにとって、大島弓子の代表作品となると、やはり『バナナブレッドのプディング』でしょうか?
これは私も思い入れの深い漫画なのですが、それだけに、なかなか記事に書けないでいます。(^^;
by びっけ (2010-05-26 22:09) 

春分

No.1はやはり「バナナブレッドのプディング」です。
でもいろいろ懐かしい。「リベルテ~」とか「~ト短調」とか「いちご~」とか。
プレゼントのカレンダーとかプチコミの表紙とかさえもが。
by 春分 (2010-05-27 22:21) 

びっけ

春分さん、コメントありがとうございます。
プレゼントのカレンダーをお持ちでしたか! すごい!!
私は、チビ猫便箋が宝物でしたが、なんやかんやで使ってしまいましたわ。
(^^;
by びっけ (2010-05-29 00:52) 

Betty

とても詩的な美しい文章。大好物です!!
先日、大島先生の映画を観たばかり☆
この作品チェックしますよ^^v
by Betty (2010-05-31 17:03) 

びっけ

Betty さん、nice!&コメントありがとうございます。
そうなんです! このエンディングの文章にも、やられました!(^^;
読んで気に入っていただけたら嬉しいです。(^^)v
by びっけ (2010-06-01 00:45) 

sknys

びっけさん、こんばんは。
「パスカルの群れ」なのか、「パスカルの群」なのか?
「ヒーヒズヒム」なのか、「ヒー・ヒズ・ヒム」なのか?
‥‥大島弓子の作品名の表記違いには悩みますね。

ちょっと調べてみましたが、
「全て‥」が、いつ「すべて‥」に変わったのか良く分からない^^;
初出(別コミ 1976.2)は「全て緑になる日まで」だと思います。
by sknys (2010-06-02 23:16) 

びっけ

sknys さん、コメントありがとうございます。
作品名って大事なものだと思うのだけれど、表記の仕方が案外大雑把?ですよね。

あぁ、やっぱり、初出は「全て」でしたか!
情報ありがとうございます!

最新の選集(メディアファクトリー版)では、表紙絵からタイトル字が消えているところからして解せません。
ひょっとして、先に、目次を「すべて」で印刷しちゃったから、つじつま合わせで、タイトル字を消した?
なんて勘ぐりたくなっちゃいます。(笑)
by びっけ (2010-06-03 22:51) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。