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『あまのかぐやま』大島弓子 [マンガ]

ちょうど高校一年の今頃だったと思うのですが
古文の授業で「大和三山」のことを習いました。

   耳成山 (みみなしやま)
   畝傍山 (うねびやま)
   天香具山 (あまのかぐやま)

畝傍山は 柔らかく盛り上がった山。
耳成山は それに比べると小さな山という感じ。
天香具山は 山というより丘陵という感じで、他の二山よりフラット。

部活の N 先輩は、いつも自己紹介の時に、この大和三山をネタに使っていました。
曰く
「大和三山の畝傍山に憧れていますが、
いまだ発育途上で香具山の・・・・・・です。」
(^^;


さて、大島弓子の『あまのかぐやま』です。
高級私立女学校の彼野女学院(かのじょがくいん)の女子高生と副担任の話です。

副担は、新任の古文教師、根木永遠夫(ねぎ とわお)先生です。

牛乳瓶の底のような分厚いレンズのメガネをかけた根木先生は、まじめな先生。
生徒にテストの山を教えて、良い点数を取らせようなんてことは考えません。
わからなければ、前の段階に戻って教えるまでのこと・・・と一学年前の教材で基礎から教えようとします。
懇親会を開いて生徒と話し合い、打ち解けようと努力もします。

でも、これが空回り。
生徒達は、ちっとも授業を聞かないし、根木先生が提案した懇親会も不調に終わります。

唯一、根木先生に好意を抱き、熱心に質問をしているのは夏野織子(なつの おるこ)だけでした。

織子には、雲林院吹子(うりんいん ふきこ)という親友がいます。
かつて、友だちがいなくて ずっと一人で歌っていた織子の側に来て、一緒に歌ってくれたのが吹子でした。

しかし、ちょっとした事件から、二人は口を きかなくなってしまいます。

意気消沈している織子に、根木先生は こう言います。
 この世には法則というものがあってさ
 “一方が あきらめなければ なかなおりは 必ず やってくる”

その言葉を信じようとする織子・・・。

それから、いろいろな事件があって、結局、二人は仲直りします。
そして、生徒達も、古文を基礎から教えていこうとする根木先生の熱心さを徐々に受け入れていきます。

最後の数ページは・・・・・・。

緑広がる平野、ふわりと浮かんだ薄い衣が 風に流されていく風景。
そして・・・

 春過ぎて 夏来るらし 白妙の 衣ほしたり 天の香具山


持統天皇のこの歌が詠まれたのは、今から 1300 年以上前・・・。
それでも、この歌を読むと、その情景が目に浮かぶような気がします。
言葉の力って 本当に不思議なものです。


こちら ↓ の、今は無き朝日ソノラマから出版された「大島弓子選集 第 10 巻」に収録されています。



5329334.jpg

大島弓子選集 (第10巻) ダリヤの帯

  •  大島弓子
  •  朝日ソノラマ
  •  1985/12
  •  単行本


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コメント 16

caramelpapa


やっぱ
大島先生いいですね

  
by caramelpapa (2009-05-21 22:02) 

たいへー

随分読み難い友人ですね。
瓜売りが・・・のようです。^^;
by たいへー (2009-05-22 07:59) 

sara

春過ぎて 夏来るらし 白妙の・・』、本当に心に沁みる清々しさを感じます☆
このマンガ、少しだけ読んだ様な気がします。大島弓子のマンガ、良いですね〜♪
そうそう、映画『グーグーだって猫である』も面白かったです。(*^-^*)
by sara (2009-05-22 09:52) 

barbermama

高校時代古文漢文が大の苦手だったのは、当時の先生が義務感だけで教えているような先生だったからかな。
こんな先生だったら古文が好きになってたかも(笑)。
by barbermama (2009-05-22 11:01) 

ryoudate

ネコを描いているだけの漫画家じゃぁなかった。
by ryoudate (2009-05-22 11:36) 

びっけ

hituji さん、nice!ありがとうございます!
by びっけ (2009-05-22 20:16) 

びっけ

caramelpapa さん、コメントありがとうございます。
若い頃も、大島弓子漫画に感じ入ることが多かったですが、それから年月を経た今も なお、感動を受けることに驚きます。
by びっけ (2009-05-22 20:19) 

びっけ

たいへーさん、コメントありがとうございます。
雲林院吹子(うりんいん ふきこ)・・・なかなか、こういう名前の人には、お目にかかれませんよね。
(^^;
by びっけ (2009-05-22 20:20) 

びっけ

sara さん、nice!&コメントありがとうございます。
「春過ぎて~」は、新緑の頃から初夏にかけての緑が美しい頃になると、思い出される歌です。
(^^)v
映画『グー猫』は、死んでしまったサバと大島さんが、ストーブのついているお店で話しているシーンにジーンときました。

by びっけ (2009-05-22 20:34) 

びっけ

barbermama さん、nice!&コメントありがとうございます。
私も、学生時代の教科の好き嫌いは、担当教師に大きく左右されました!
世界史の先生が大好きだったので、苦手な世界史もせっせと勉強したものです。
今は、ほとんど忘れちゃったけれど・・・。(^^;
by びっけ (2009-05-22 20:37) 

びっけ

ryoudate さん、nice!&コメントありがとうございます。
そうなんです!
猫のマンガも描いているけれど、それ以上に、女子高生や若い女性、いやいや中年女性の悩み、不安、葛藤も見事に描いてくれるマンガ家です!!
by びっけ (2009-05-22 20:40) 

びっけ

夢空さん、nice!ありがとうございます!
by びっけ (2009-05-23 20:39) 

薔薇少女

大島弓子作品の登場人物の名前は珍しい名前ばかりの様ですが
何処から発想されるんでしょうかね・・・
by 薔薇少女 (2009-05-24 23:52) 

びっけ

薔薇少女さん、nice!&コメントありがとうございます。
現実には なかなかいない名前ばかりですよね。(^^;
「夏野織子」は、いいかなぁと思いますが・・・。
by びっけ (2009-05-25 21:20) 

miyuco

ふわふわと漂っているような薄衣
見開きの情景はすてきでした。
こういう絵は大島さんの独壇場ですね。
根木せんせいのがんばりは
健気すぎて痛々しかったです。

by miyuco (2009-05-26 13:51) 

びっけ

miyuco さん、nice!&コメントありがとうございます。
大島弓子らしい、広がりの感じられる絵でしたねぇ・・・。(v_v)しみじみ。

熱血体育会系の先生は苦手ですが、こういう まじめ文化系先生というのも、あまりにまじめだと、ちょっと・・・ですね。(^^;
高校の先生は、ほどよくユルユルで好きな先生が多かったです。(笑)
by びっけ (2009-05-26 19:46) 

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